登山、ハイキングにもご用心!
 

マダニが媒介するライム病と日本紅斑熱 
 林や草原には動物を吸血するマダニが住んでいますが、そこを人が通ると人にも吸血します。このライム病の感染者は欧米では多く、ドイツでは毎年約2万人、オーストラリアで約1.4万人、米国で約2.1万人もいます。ライム病は日本ではシュルツェマダニが媒介し、北海道を中心に全国的に数十人の感染者が出ています。
 また、1984年に馬原により発見された日本紅班熱という病気もキチマダニ、フタトゲチマダニというマダニが媒介し、Rickettsia japonicaというリケッチアにより起こります。頭痛、筋肉痛を伴う40℃以上の発熱と皮膚や手掌の紅班が特徴です。日本での患者数は420人程で、登山、ハイキング、山野への立ち入りにより感染しています。急激に発症する怖い病気なので注意が必要です。

登山やハイキングをする時には、こういう病気もあることを心に留めておきましょう。
当教室には人に咬着したマダニ類の標本も保存しています。
マダニの分類学的位置
節足動物門
蜘蛛形綱
ダニ目
マダニ亜目
マダニ科


ツツガムシの分類学的位置
節足動物門
蜘蛛形綱
ダニ目
ツツガムシ科

香川にもあったツツガムシ病
 古くから秋田、山形、新潟県の河川敷やその周辺を中心に、高熱が出て死亡する病気があり、これはアカツツガムシ幼虫によって媒介される事からツツガムシ病と名付けられました。病原体はOrientia tsutsugamusiというリケッチアです。かつて四国にも土佐のホッパン、香川の馬宿病という風土病があり、これらはトサツツガムシが媒介するツツガムシ病でした。症状は、特有の刺し口、高熱、リンパ節腫脹、発疹です。これらの死亡率の高いツツガムシ病は1980年頃にはなくなり、替わってタテツツガムシ、フトゲツツガムシが媒介する、症状の軽いツツガムシ病が現れ、馬宿病は全くなくなりました。しかし、この新型ツツガムシ病は年間500人程の感染者が出ており、重症化する事もあるので注意は必要です。
 ツツガムシ類の分類には幼虫の背中にある背甲板の形と毛の形態(下図参照)が重要である。


医学部国際医動物学教室