サヌカイト(岩石)


常設展で展示中の標本

 
標本点数 点 保管場所 香川大学博物館展示室


サヌカイト(Sanukite)
□名称の由来
讃岐の名石として知られるサヌカイトは黒色緻密で堅く、たたくとカンカンと金属音を出すので、属に「カンカン石」と呼ばれる。割ると鋭利な角や貝殻状の割れ口を呈することから、縄文〜弥生時代の生活用具として、矢じりや石刀など人類発展に大きな役割を果たした。江戸時代の頃から「磬石(けいせき)」として親しまれ、石琴などの楽器や合図用に使われてきた。大正時代から香川県綾歌郡国分寺町の民有地で産出され、土産物としても重宝がられている。
1891年にドイツの岩石学者ワイシェンク(Weinschenk)が来日して研究し、世界で珍しい感関として、産地の旧国名讃岐にちなみ、サヌキット(Sanukit)と命名して報告した。これが英語読みのサヌカイト(Sanukite)となり、世界的にも有名になり、日本でも「讃岐岩」として知られるようになった。1919年には小藤文治郎がサヌカイトと近縁な性質を有する瀬戸内地域の中新世火山岩をサヌカイト類(またはサヌキトイド)と名付けた。
□分類と起源
サヌカイトは、古銅輝石安山岩の一種で、今から約1300万年前の瀬戸内海地域の火山活動によってできた物と考えられている。講義のサヌカイトは、世界中でも、香川県の五色台周辺や坂出市の金山や城山、大阪府と奈良にまたがる二上山地域ほか数カ所でしか産出が知られていない、きわめて珍しい岩石である。音の良いサヌカイトはきわめて限られた地域(五色台の国分台付近)だけに産出する。
九州東部から愛知県にかけて、サヌカイト類の岩石を含む火山岩類が点々と分布し瀬戸内火山帯と呼ばれている。これらのマグマは、1700万年前頃から日本列島がアジア大陸から分離して日本海が形成されたときに、西南日本弧が誕生間もないフィリピン海プレートの上にのし上げて、マントルが融解して形成されたと考えられている。このようなプロセスは、初期地球における大陸地殻の形成という地球史における大事件を解き明かす鍵として注目されている。
□特徴
サヌカイトは、黒色、緻密、硬堅で、通常の玄武岩や安山岩と比べて斑晶が少ないことが特徴的な火山岩である。五色台で見られるサヌカイトは、虫食い状・朽ち木状・松かさ状・かつお節状と呼ばれる様な珍しい形をしている物があり、表面の色は灰色〜白色になっている。これは風化や冷却過程で形作られたもので、サヌカイトの岩石組織と関係があると言われている。
サヌカイトは総斑晶量2%以下のガラス質安山岩〜デイサイトで、斑晶鉱物として通常、かんらん石、斜方輝石を稀にホルンブレード、オージャイト、斜長石を含んでいる。サヌカイトの基石は斜長石をほとんど含まず、ガラスと微細な斜方輝石および磁鉄鉱からなる。サヌカイトとほぼ同じ化学組成を有する完晶質の古銅輝石安山岩では石基に流理構造が発達している。
□讃岐平野の成り立ち
約1400万年前から、讃岐平野を含む瀬戸内海一帯にかけて、激しい火山活動が起きた。花崗岩の大地の上に、火山岩塊、火山礫、火山灰などを降らせた後、大量の溶岩が流出した。上部を覆った硬い溶岩は、その下の凝灰岩や凝灰角礫岩などの柔らかい火山堆積物を浸食から守り、やしまや五色台のような円錐状の山(ビュート)をつくった。