香川県三木町白山(しらやま)の蝶
~40年前との蝶類相の比較~
 近年、里山の昆虫相は注目されていますが、かつてはそれほど珍しい種類が生息していたわけではないので、熱心に調査した人はほとんどおらず、ある里山でのまとまった報告は多くありません。香川県内の里山についても、事情は同様ですが、三木町の白山は、「香川生物」の第4号に、香川大学農学部の自然科学部が1968年までに採集したチョウのリストを報告していました。そのため白山は、現在と比較することにより具体的にチョウ相の変遷を知ることができる、香川県内でも数少ない貴重な場所であると言えます。
また、2004年から白山では雑木林が広範囲に伐採され、サクラが植栽されるという、著しい環境変化が生じていす。このため、現時点でのチョウ相の記録は、伐採がチョウ相に及ぼす影響を知る上でも重要であると考えられます。



農学部から見た白山
1960年代のチョウ相を知るために、過去の文献、香川大学自然科学部が保持している標本、香川大学農学部の昆虫学研究室が保持している標本を調べました。また、香川県内の昆虫愛好家にも協力してもらい、過去に白山で採集した蝶のデータを教えてもらいました。これらの記録をあわせて、1960年代に白山では、県のレッドデータの対象種の15種を含む、53種のチョウが確認されていました。
2004年5月16日四国新聞より(一部改変)

調査ルート
登山道R-1と山麓の道路R-2
1968年に発行された、「香川生物」第4号と、
15ページの「三木町白山の蝶類」
現在の白山のチョウ相を知るために、採集・見回り調査を実施しました。
2006年4月中旬より2007年6月末まで、月2-3回程度、白山神社からの登山道(R-1)と山麓の道路(R-2)をゆっくり歩きながらチョウ類を採集あるいは目撃した種を記録しました。特に、絶滅危惧種を多く含む、ミドリシジミ類、ヒョウモンチョウ類の出現時期である6・7月頃はなるべく頻繁に調査しました。

調査結果の概略を上に示しました。
今回の調査では、南方系のナガサキアゲハやイシガケチョウ、クロコノマチョウなどが見られるようになりましたが、15種のレッドデータブック対象種のうち9種が確認できず、40年前とチョウ相が変化していることが分かりました。 この原因は、はっきりとは分かりませんが、植生の変化や草地の減少、宅地の増加及び温暖化などが影響していると考えられます。
今回の調査だけでは、白山の森林伐採がチョウ類に及ぼす影響までは分かりませんが、今後も調査を続けていくことにより、明らかになっていくでしょう。今回の調査は、現在の状況を知る上で、また、未来との比較を行う上で重要な資料となると言えるでしょう。

香川大学農学部昆虫学研究室