■ 第2回企画展「昆虫のふしぎ」
期間:2008年7月23日(水)〜9月20日(土)
開催時間:10:00〜16:00
休館:日・月曜日 8月10日(日)〜18日(月)
         ※9月14日(日)・15日(月)は特別開館
観覧料:無料
会場:香川大学博物館
入場者:1,302名

主催:香川大学博物館
共催:香川大学農学部





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<展示内容>
1.戦後まもなく岩田久二雄博士がみた香川県の昆虫
  岩田久二雄博士(1905-1994)は、単独性カリバチ類の比較習性学研究と様々なハチ類の繁殖習性の研究にとりくみ,その成果をまとめた大著「本能の進化ーハチの比較習性学的研究」や多くの著作でしられている世界的に著名な昆虫学者です。岩田先生は、戦後間もなく香川県立農業専門学校の昆虫学研究室教授として赴任し、わずか2年間でしたが、三木町を中心に精力的に様々な昆虫の生態を研究し、多数の論文を発表しました。岩田先生が三木町で観察した昆虫を紹介します。

2.香川県のアリ
 アリ類は、陸上で最も繁栄した動物のひとつで、極域を除くとどこにでも沢山生息しています。そのため、多様な生物に様々な影響を及ぼしており、「地球はアリの惑星」とよばれるほど重要な役割を担っていると考えられています。また、種類数も意外と多く、そのかたちや生態も様々です。日本には約270種のアリが生息しており、このうち、これまでに香川県から記録されている87種のアリを紹介します。

3.三木町白山のチョウ
 近年、里山に生息していた生物が最近では姿を見せなくなったことが多数報告されています。しかし、里山には、そもそも珍奇な種類は生息していないので、過去に充分な調査がされた例は少なく、里山の生物相の変遷をしることは困難です。三木町白山は、香川大学農学部の学生サークルである自然科学部が1968年に「香川生物」に、「三木町白山の蝶類 」と題して「これまでに白山で採集されたチョウのリスト」を報告しています。私たちは2006年に白山のチョウを調べました。過去の報告と比較し、白山のチョウ相の変化を紹介します。

4.日本で栽培されるオリーブの宿敵・オリーブアナアキゾウムシ
 県花・県木に指定されて保護・育成されているオリーブが香川県に導入されたのは今からちょうど100年前、1908年(明治41年)のことであった.油脂の国内自給を目指してアメリカから輸入された苗木の栽培試験が小豆島で成功したのがその発端となった.導入直後からオリーブ栽培の最大の障壁となったのがオリーブアナアキゾウムシで,このゾウムシの防除を行わなければ成木でも数年で枯死してしまうため,粘り強く継続的な防除が必要となる.殺虫剤の散布を最小限にするため,成虫の潜伏場所である根元周辺を裸地状態にしておくことが発生を抑制するために有効であることが昆虫学研究室と香川県農業試験場小豆分場の共同研究で明らかになってきた.

5.クヌギなどの樹液をめぐる昆虫類
 森林地域の中で,伝統的に日常利用してきた山野とその周辺の田畑などを含めた地域を里山と呼んでいる.香川県は森林地域に占める里山の割合(約80 %)が全国でもっとも高い県である.このような里山はあまりにも身近でありふれた環境であったため,学問の対象として研究されることが少なかった.このため,そこに住む動植物やそれらの相互関係についてはいまだに不明な部分が多く残されている.クヌギなどの樹液をめぐる昆虫類の相互関係もその一つである。近年,この問題に取り組み始めた昆虫学研究室では既にダニを含む2種の新種を発見し,多くの稀少種が樹液に関わった生活を送っていることを記録している.

6.昆虫のふしぎ
(1)性的二型と性淘汰(トリバネアゲハ、カブトムシなど)
 昆虫のなかには雄と雌で色や形が大きく異なるものがあり、この現象を性的二型と呼んでいます。たとえばニューギニア産のトリバネアゲハは雄は金緑色をしていて美しいのですが、雌は褐色で地味な色合いです。またカブトムシの雄には立派な角があるのに、雌にはありません。もしカブトムシの角が鳥などの天敵と戦うためにあるのであれば、雌にも角が必要なはずです。したがってこの角は雄どうしが戦って勝った者が雌を獲得するように進化してきたものと考えられます。また雄が雌よりも美しいのは、美しい雄ほど多くの雌を引きつけて交尾できるからであると考えられています。このように雄が多くの雌を獲得するために、強さや美しさを高めるように競いながら進化するという考えを性淘汰と呼んでいます。進化論・自然淘汰で有名なチャールズ・ダーウィンが性淘汰を提唱しました。

(2)擬態(アサギマダラとカバシタアゲハ、コノハチョウなど)
 昆虫のなかには体の形や色、模様を樹皮や木の葉などに似せて天敵から身を隠すものがいます。これを隠蔽的擬態(保護色)といいます。また幼虫期に有毒な物質を含む植物を食べている種は成虫になっても体内にその毒を保有しており、天敵の鳥などが捕食すると味がまずくて吐きだしてしまうものがいます。このような味の悪い種は鮮やかで派手な色彩をしていることが多いです。これは天敵が色の鮮やかさと味のまずさを関連づけて学習するため、次回からはその種を襲わなくなる効果があります。このような色彩やデザインを警告色と呼びます。また有毒で警告色を持つ昆虫に、無毒な昆虫が姿を似せて、天敵の誤認によって身を守る方法を標識的擬態と呼びます。コノハチョウは隠蔽的擬態、アサギマダラは警告色、カバシタアゲハは標識的擬態の例です。

(3)ふしぎな形、美しい色(トリバネアゲハ、モルフォ、ニジダイコクコガネなど)
 世界の昆虫には何でこんな形をしているのだろう、どうしてこんなにきれいなのだろうと思わせるものがたくさんあります。前項の擬態や警告色で説明がつくものも多いのですが、なかにはまだ説明のつかないものもたくさんあります。この展示では昆虫の色と形の不思議を見ていただきたいと思います。

(4)個体変異、地理的変異、種分化へ(ミヤマカラスアゲハ、メガネアゲハなど)
 われわれ人間の顔が一人一人異なるように、一見どれも同じに見える同種の昆虫のなかにもさまざまな違い(個体変異)がみられます。同じ生息場所にすむ個体間の変異ばかりでなく、同じ種でも違う地域に住んでいるものの間の違い(地理的変異)があります。さらにこのような変異が拡大していくと別の種へと進化(種分化)が起こります。この展示では個体変異や地理的変異の大きな昆虫を見比べながら新たな種が生まれる過程を考えます。

7.特別展示 大屋 崇博士のトリバネアゲハコレクション
 三豊総合病院(香川県観音寺市)の元院長である大屋崇博士は心臓外科医としても著名な方ですが、同時にニューギニアを中心に分布する世界最大・最美の蝶類であるトリバネアゲハ類の研究者・収集家としても世界的に知られています。1983年には大著「トリバネアゲハ大図鑑(講談社)」を出版され、その後も精力的に活動されています。今回は大屋先生の特別のご厚意からお借りすることのできた標本を展示します。


展示全景

戦後まもなく岩田久二雄博士が見たかがわの昆虫・香川県のアリ

香川県三木町白山の蝶

日本で栽培されているオリーブの宿敵・オリーブアナアキゾウムシ・クヌギの樹液をめぐる昆虫類

昆虫のふしぎ

特別展示 大屋崇先生のトリバネアゲハコレクション

展示されていた標本を見ながら絵を描く

顕微鏡を使ってアリを観察

■ 公開講座 「モノ」の見方 〜研究はじめの第一歩〜
年月日:7月23日(水)・24(木)・25(金)
開催時間:10:00〜11:30
受講料:2000円
講師:安井行雄(企画展実行委員長、工学部准教授)
    寺林 優(博物館副館長、工学部准教授)
    丹羽佑一(博物館長、経済学部教授)
会場:香川大学博物館
参加者:(1日目:昆虫標本)28名
     (2日目:化石)26名
     (3日目:石器・土器)25名

一つの昆虫標本、一つの土器、一つの岩石。
そういった「何気ないもの」も、
見方をかえると、世界の見え方がずいぶん変わります。

「昆虫標本からわかること」を受講するこどもたち


「化石からわかること」を受講するこどもたち

星の砂を熱心に探す

「土器からわかること」を受講するこどもたち

土器の破片から拓本をとる