香川県のアリ
 
日本全域には約270種のアリが分布しています。アリ類は温暖な地域に多い昆虫で、日本国内でも南西諸島における種多様性が卓越しており、本土(北海道から九州まで)に分布するアリは270種のうち約160種です。四国からは現在まで116種が記録されており、そのうち87種が香川県にも分布しています。どこの公園や人家の周辺でも、10種程度のアリを見ることができます。また林の中にはいると、30〜40種のアリが生息しています。この展示では香川県のアリを標本、写真と飼育コロニーで紹介します。
小さな種類が多いので、顕微鏡で観察して下さい。アリの形態が驚くほど多様なことがわかるでしょう。
 形態だけではなく、生活の様子や行動も多様です。そして、多くの生物がアリとなんらかの関係をもっており、アリは陸上生態系で重要な役割を果たしています。

クロヤマアリの巣に住むアリヅカコオロギ。香川県でも各地でみられる。

アルゼンチンアリ
(撮影 H. Imai & M. Kubota,
アリ類データベースより引用)
 アリの種類によっては、貨物などの行き来に伴って巣ごと新しい生息場所に移動して、そこに定着するものもいます。このようなアリを放浪アリとよびます。アルゼンチンアリは典型的な放浪アリで、南米原産ですが、世界各地に分布を広げています。日本でも、1993年に広島県で発見され、現在では関東から山口県まで各地に定着しています。このアリは競争力が強く、侵入してしばらくすると日本のアリが駆逐されてしまいます。また、家屋内にもよく入り込み、不快害虫として問題になっています。香川県ではまだ見つかっていませんが、いつ侵入してもおかしくありません。このようなアリの被害を防ぐためには、侵入直後の分布が拡大していない段階で発見し、防除することが重要です。みなさんも、家の周りのアリを調べてみてください。


香川大学農学部昆虫学研究室(伊藤文紀)