脳梁欠損マウス


常設展で展示中の標本


標本点数 約1点 保管場所 香川大学博物館展示室


脳梁欠損マウスの発見
 
 香川医科大学(現香川大学医学部)で飼育されていたddN系マウスは、1972年に藤井医動物・神戸から購入し、当時厚生省(現厚生労働省)神経疾患委託研究「精神遅滞の本態および成因に関する開発的研究」(分担代表研究者:村上哲英)というテーマの下、回避学習用の実験動物として開発が続けられていた。1982年にddNマウス近交系化が試みられた際にはじめて、顔面が扁平したマウスが発見され、出生する第2世代胎児のうち10%の割合で顔面が扁平なマウスがの出現を確認できた。このころ、外観を制御する遺伝資源の保存として調査研究が開始された。1984年頃、顔面扁平マウスは実験に供与できる数に達し、外鼻短小、上顎・下顎骨形成不全、眼間拡大などを有していることが明確になった。一方、回避学習の成績では顔面正常と扁平マウスとの間に差は認められなかったことから、脳の組織学的解析が行われた。その結果、ようやく、顔面扁平マウスは、脳梁を完全に欠損している事が示された。これらの結果は、Ozaki H et al., Neuroscience Res. (1) 81-87, 1984に発表され、昭和58年度研究成果報告書として厚生省へ報告された。下図は、研究成果報告書を引用させていただいた。
まれている。
 近年、頭蓋顔面の骨形成異常には、繊維化細胞増殖因子受容体2型(FGFR2)の突然変異によって引き起こされる事が明確になり、頭蓋顔面における骨や軟骨形成にかかわるこれら遺伝子の活性化とその制御機構に注目される一方で、未だに脳梁(corpus callosum)の形成が染色体上のどの領域の遺伝子により制御されているのかは明確になっていない(2008年4月現在)。興味のある方は、世界最大のマウス供給会社(ジャクソン ラボラトリー)が提供しているサイト(マウス ゲノム インフォマティックス)にアクセスしていただき、形質検索の欄にabsent corpus callosum と入力し、詳細情報の入手をお勧めしたい。http://www.informatics.jax.org/javawi2/servlet/WIFetch?page=markerQF
文責 香川大学医学部 神経機能形態学 松本由樹(まつもとよしき)