農学部遺跡足跡剥ぎ取りシート(奈良時代末)


常設展で展示中の標本

 
標本点数 約6点 保管場所 香川大学博物館展示室


香川大学農学部遺跡で検出された足跡
2000年4月から7月の香川大学遺伝子実験施設建設に伴う発掘調査で奈良・平安時代の水田面で多数のヒトの足跡が検出されました。足跡の分布に農作業が復元できるようなパターンは認められませんでしたが、調査区西南部で二名の歩行が確認されました。二人はほぼ同一線上を、一人は東から西へ、一人は西から東へ進んでいて、最も接近したところから進行方向を変えています。前者が立ち止まりつつ進んでいることからも、二人はお互いを確認し、近づき、短い立ち話の後別れたと思われます。足跡は共に23cmほど、歩幅の差から、老婆と急ぎ足の少年か成女でしょう。二人の語ったものは何でしょうか?分かっていることは、直後に西を流れる旧吉田川の氾濫の土砂で水田が完全に埋没したことだけです。水口が切られたままなことや、水田が整ったものでないことから晩春の出来事であったと思われます。東西に走る畦は讃岐国山田郡八・九里の里界延長から南へ22m、三木郡六・七条の条界から西へ三つ目の坪内半折り地割に重なっています。

農学部遺跡・遺伝子実験施設地区「会話する足跡」(奈良・平安時代水田面) 2000年5月

(展示品は剥ぎ取りによる作成のため左右が逆になっています。)

丹羽佑一(経済学部)